特別シリーズ企画『N=1s』

Neuroscience Research 誌Volume 105 (April 2016) に、かねてより準備してきました、特別シリーズ企画「N=1s」の第一号論文を刊行します。

 科学研究では、観測例や存在自体が少なくても、意味の大きな現象が存在します。そのようなデータは実験の現場では良く知られていても、1研究グループでは例数が積み重ねられないために、論文として発表して隣接領域の研究者に知って貰うことは、これまで極めて困難でした。

 これらの「埋もれた・意味のある・少数データ」に、何とか光を当て世にだせないかと考えました。そこで、学会誌としての本誌の特徴を活かし、多くの同業の会員がそれらの少数例を持ち寄って体系的な協働作業をすることを構想したのが、この特別シリーズ企画です。シリーズ名の「N=1s」は、希少例を象徴することを意図しました。

 その第一弾が、本号 Yamada et al. による、神経生理学分野で知られている大脳基底核のFast-Spiking Neuron です。日本の霊長類神経生理学は、研究室数の上からも、その歴史の長さからも、そして何よりもその質の揃った研究レベルの高さで、世界をリードしています。本論文では、そのような、異なる4つの研究室で独立して行われた実験の中で観測された希少例を糾合して、一つの体系的な解析を行い、見事に一つの結論を導き出しました。参加された多くの共著者のご努力に深甚なる謝意を表します。

 この他にも、例えば解剖学における少数例、臨床における希少症例など、隠れた重要データはいろいろ有り得ると思います。今後も本誌では、随時・不定期的にこの様な企画をシリーズ化して掲載してゆきます。レベルの高い日本の神経科学コミュニティーの学会誌として、秀逸な企画のご提案(<nsr-editor@jnss.org>宛)を歓迎します。

入來篤史(Neuroscience Research 編集主幹)