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演題詳細

Educational Lectures


開催日 2014/9/12
時間 9:00 - 10:00
会場 Room D(503)
Chairperson(s) 伊佐 正 / Tadashi Isa (自然科学研究機構 生理学研究所 / National Institute for Physiological Sciences)

動くものを眼を動かして見るー眼球運動研究でわかること

  • EL4
  • 河野 憲二 / Kenji Kawano:1 
  • 1:京都大学大学院医学研究科 認知行動脳科学分野 / Grad.Sch.of Med.& Fac.of Med., Kyoto Univ. 

眼の機能は外界を見ることであり、眼球運動はこの視覚機能を良好な状態に保つ働きを持っている。出力である眼球運動をモニターしながら、入力である視覚刺激をコントロールし、ニューロン活動を記録することで、運動制御、感覚情報処理など脳で行われている様々な情報処理について調べることができる。
 眼球運動には、急速に視線方向を変化させる時に起こるサッケード運動(Saccade)、動く小さい視覚刺激を中心窩にとらえて追いかけるために起こる追跡眼球運動(Pursuit)などがある。広い視界の網膜像がぶれて動くのを防ぎ、安定した外界像の中で生活できるように視覚機能を保つための眼球運動は、視運動性眼振あるいは視運動性反応(Optokinetic Nystagmus / Response)と呼ばれ、視覚刺激の動く方向への眼球の偏位(緩徐相)と眼球位置を戻すための速い眼球運動(急速相)から成り立っている。急速相が脳幹の神経機構で反射的に制御されているのに対し、緩徐相は検出した視覚刺激の動きをキャンセルするように眼を動かし、視界のブレを防ぎ、安定した視覚が保てるように制御されている。この緩徐相の開始部(Ocular Following Response, 追従眼球運動)に着目し、サルで電気生理学的実験と局所破壊実験を行った結果、この眼球運動の制御には大脳皮質上側頭溝壁にあるMT (Middle Temporal)、MST (Medial Superior Temporal)野から、橋核、小脳傍片葉、前庭神経核を経て外眼筋運動神経核にいたる経路が関与し、感覚から運動への情報変換が行われていることが明らかになった。
 一方、私たちは普段、眼が動いているか動いていないかに関わらず、見ている世界を連続して安定したものとして知覚している。つまり、脳には、眼を動かしているときに生じる網膜像の動きが、「実際に物体が外界で動いていることによって生じたもの」であるか「眼球運動により受動的に生じたもの」であるかを区別するための神経機構があり、その働きによって安定した視覚世界が脳内で再現されていると考えられる。追跡眼球運動(Pursuit)を遂行しているサルのMT/MST野からニューロン活動を記録したところ、MTニューロンのほとんどが視覚刺激の網膜上の動きに応じた反応を示すにもかかわらず、MSTニューロンの多くは視覚刺激の外界での動きに応じた反応を示した。この結果は、MST野では、MTニューロンから得られた網膜座標系の視覚情報と眼球運動情報とを用いて、「現在遂行中の眼球運動を補正した空間座標系の外界像」が再現されていることを示している。
 また、サッケード運動による急速な視線の移動にもかかわらず連続性した視覚世界が脳内に保たれる機構に関連したニューロン反応もMST野から記録されている。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

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