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演題詳細

Educational Lectures


開催日 2014/9/11
時間 17:00 - 18:00
会場 Room D(503)
Chairperson(s) 岡部 繁男 / Shigeo Okabe (東京大学大学院医学系研究科 神経細胞生物学 / Dept.of Cell Neurobiol., Fac.of Med., Univ. Tokyo)

個体レベルのシステム生物学の実現に向けて

  • EL2
  • 上田 泰己 / Hiroki Ueda:1 
  • 1:東京大学大学院医学系研究科 機能生物学専攻 独立行政法人 理化学研究所 生命システム研究センター / Graduate School of Medicine, The University of Tokyo 

250年以上も昔、スウェーデンの植物学者のカール・フォン・リンネはユニークな時計を発明した。「花時計」として発表されたその時計は、いろいろな花の開閉時間を観察し、午前6時から正午までに咲く花と、正午から午後6時までに閉じる花を1時間ごとに配置したものである。この花時計を一目見て、 どの花が咲いているのか、あるいは、どの花が閉じているのかを観察すれば、地球上のその場所がいま何時かがわかる。つまり、花時計を通して花が知っている時間を人は教えてもらうことができるのである。では、それぞれの花がそれぞれ決まった時間に花開くことができるのはなぜであろうか?それは、花は自然が創り上げた時計を備えているからである。
 花と同じように私達の体の中にも自然が創り上げた時計がある。体内時計(概日時計)と 呼ばれるこの時計は、約24時間の周期でリズムをうち、光や温度の変化を感知してリセットされ、体内で起こる様々なイベントのタイミングを調節している。 花が決まった時間に咲くように、ヒトは朝自然に目が覚め、花がある時刻が来ると閉じるように、ヒトも夜になると自然に眠たくなる。皮膚や心臓や血管を初めとして、腸や肝臓などのほとんどの臓器に体内時計をもった細胞があり、体の様々な場所に時計細胞が存在する。決まった時間におなかがすいて「腹時計」が鳴るのも、実は物理的な実体があるのである。このように体全身に無数に散らばっている時計細胞は、全体として統一的な時間を刻んでいる。
 近年、これら一つ一つの時計細胞の中に、朝・昼・夜の3つのスイッチがあることがわかってきた。このスイッチを押したり、消したりする役目を担っているのが、時計遺伝子たちで20個程存在することが現在までにあきらかになった。つまり、私達の体の隅々にある時計細胞という舞台の中で、これら20人あまりの役者たちによる体 内リズムという劇が、朝・昼・夜の三幕構成で毎日繰り返されているのである。
 講演では、体内時計の解明の現状や生命科学の「現在」について紹介するとともに、細胞から少量多品種で個体を創りだす技術や、器官をまるごとイメージングすることを可能にする器官透明化などの技術を紹介し、これらを用いた個体レベルのシステム生物学の実現に向けた試みを議論したい。
参考文献 Nature 418: 534-9 (2002),PNAS : 101:11227-32 (2004),Nature Genetics 37:187-92 (2005)
Nature Genetics, 38:312-9 (2006),Nat Cell Biol. 9:1327-34 (2007),Nature 452, 317-22, (2008)
PNAS 05, 14946-51 (2008),Nat Cell Biol. 10, 1154-63(2008),PNAS 106, 9890-5 (2009).
PNAS 106, 15744-9 (2009), Curr Biol.20(24):2199-206.(2010),Cell 144(2):268-81 (2011),
Nature Rev. Genet. 12(6):407-16 (2011). Cell Reports 2(4):938-50 (2012). Genome Biol. 14(4):R31 (2013). Cell, 157(3): 726–39, (2014).

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