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演題詳細

Educational Lectures


開催日 2014/9/13
時間 10:00 - 11:00
会場 Room D(503)
Chairperson(s) 服部 信孝 / Nobuaka Hattori (順天堂大学 医学部脳神経内科 / Department of Neurology, School of Medicine, Juntendo University)

神経変性疾患の謎を解くータンパク分解系からのアプローチ

  • EL9
  • 田中 啓二 / Keiji Tanaka:1 
  • 1:公益財団法人 東京都医学総合研究所 / Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science 

近年、「細胞内の主要なタンパク質分解系であるプロテアソームとオートファジーが破綻すると神経変性疾患が発症する」というスキームが一般化しつつある。実際、プロテアソームやオートファジーを中枢神経系特異的に欠損させると、神経変性疾患を引き起こすことがマウス遺伝学で示唆されている。一方、細胞内のエネルギー生産工場であるミトコンドリア(Mt)は、ATP合成(ヒト成人では1日約100kg)の副産物として活性酸素(ROS)を不可避的に発生させる。特にMtの品質が悪化(主に膜電位の低下)するとROSの産生が増加し、DNA・タンパク質・脂質などを修飾して細胞障害を引き起こす。ニューロンは大量のATPを合成・消費するためROS蓄積のリスクが高いが細胞分裂によって損傷Mtを浄化できない。そのため、ニューロンにとってMtの良・不良を監視すること(品質管理)は、自身が健全に活動するために不可欠である。実際、パーキンソン病(PD)におけるMtの機能異常(呼吸鎖の低下やMtDNAの欠失など)の報告は、この20年余集積の一途を辿っている。これらの知見を受けて最近、Mtの品質管理に関する研究が国内外で急速に進展している。我々は若年性発症型の常染色体劣性遺伝性パーキンソン病の原因遺伝子産物であるPINK1(タンパク質リン酸化酵素)と Parkin(ユビキチン連結酵素)に着目し、PDの発症機構解明に挑んできた。通常、Mt外膜局在型のPINK1は膜電位依存的に恒常的に分解されており検出できないが、膜電位が低下すると分解から免れて外膜上に蓄積する(JCB 2010)。蓄積したPINK1は二量体化(さらにTomトランスロケータと850 kDの複合体を形成)を伴った分子間自己リン酸化によって活性型に変換される(Nat Commun 2012, JBC 2013a)。活性型PINK1はサイトゾルの不活性型Parkinを活性型に変換・不良Mtに移行させる。このParkinの活性化には、PINK1によるParkinのリン酸化(JBC 2013b)とユビキチンのリン酸化(Nature 2014)が必須な役割を果たしている。未解決の最大の課題はParkinの不良Mtへのリクルート機構であり、現在精力的に解析中である。以上のような機構によって複数のMt外膜タンパク質がユビキチン化されると、これが引き金となって損傷Mtはプロテアソーム及び選択的なオートファジーによる分解を受け、不良Mtは除去される。このためにMtは分裂と融合を繰り返しているが、品質管理が適切に行われずに異常Mtがニューロン内に蓄積すると細胞変性や細胞死を引き起こし、最終的にPDが発症すると推定される。本講演では、PINK1・Parkin系に焦点を当て、PINK1 と Parkin が協調して不良Mtを厳格にモニター・選択的にクリアランスする仕組みを紹介し、神経変性疾患発症におけるタンパク質分解系の重要性を概説する。

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