Cajal Advanced Neuroscience Training Programme参加記

名古屋市立大学大学院薬学研究科
病態生化学分野 博士後期課程1年
荻野 ひまり

 FENS-JNS若手研究者交流支援プログラム(YREP)よりご支援を頂き、2017年7月3日から23日の3週間、私はフランスのボルドーで開催されたFENS主催 Cajal Advanced Neuroscience Training Programme 2017/ Advanced Techniques for Synapse Biologyに参加させていただきました。今春より博士後期課程への進学を決めていた私は、在学中に一度は世界に出て、研究者を志す人々と互いに切磋琢磨し合いながら研究し、視野を広げることに挑戦してみたいと考えていました。今年2月に、偶然YREPの募集を見つけ、即座に応募することを決めました。運良く採用して頂き、ボルドーでの挑戦が始まりました。

ブルス広場にて・水鏡

ブルス広場にて・水鏡

ビスケー湾に面したフランス南西部に位置するこの都市は、「月の港ボルドー」としてフランスの世界遺産に登録されています。歴史的建造物と近代的な都市との融合が織りなすその優雅な街並みは、自然と人々の表情に笑顔と安らぎを与え、私もこれから始まる3週間に大きな期待を抱きました。
 ボルドー大学は、賑やかな街の中心部からは少し離れた閑静な住宅街の近く、私達のホテルからは片道20分ほどの場所にありました。コースの初日は、朝8時半頃にホテルのロビーに集合し、参加者との初対面を果たしました。互いにどのような人物なのか非常に気になりつつも、全員の緊張はピークに達していたのか、道中の景色を楽しむ余裕も会話を交わすことも殆どないままに大学に到着しました。大学では、directorsからの温かい歓迎を受けた後、コースの詳細や施設の説明を受けました。その後行われた自己紹介で、それぞれがやっと自分色を取り戻し、私たちはすぐに打ち解け始めました。
 私の参加したAdvanced Techniques for Synapse Biologyは、計15カ国出身の大学院生またはPostdoctoral Fellow 20名と、instructor 25名から構成されていました。コースは1週間半ずつ2つのセクションに分かれ、午前中はinstructorやinvited speakerによる講義、午後は、参加者2~3人が各instructorの提示するProjectに携わり、3週間で計2つのProjectを行いました。講義は主にinstructorの研究内容についての紹介でした。非常にアットホームな雰囲気で、講義中は参加者や他のinstructorからの活発な質疑応答が行われていたことが強く印象に残っています。私はSynapse biologyの経験がほとんどなかったため、始めは他の参加者に比べると講義内容が十分に理解できず、焦燥を感じることもありました。しかし、コースでは昼食や夕食をinstructorやinvited speakerと共にしていたので、疑問があればいつでも質問できましたし、講義よりも白熱したdiscussionが食事中に繰り広げられることもしばしばありました。
 今回私たちが取り組んだProjectのほとんどは、それぞれのinstructorの研究室が取り組むテーマの延長で、研究の背景や意義、実験の手技に至るまで全員が理解するまで質問を繰り返すことができました。私は超解像度イメージングを用いたシナプス構造の解析と、Optogeneticsとパッチクランプ法を用いたPI3K経路のシナプス機能への寄与の解析を行いました。どちらのProjectでも、実験技術と知識の基礎的な部分から、今の技術の問題点や限界、研究テーマの着想の経緯や工夫点などに至るまで、教科書や論文からは知り難いことも学ぶことができました。各セクションの最終日には、自分たちの得た技術や結果について全員の前で発表・議論しました。またコース期間中は、参加者が自身の研究ポスターを大学の壁に掲示していたので、空き時間を見つけては互いに研究内容を紹介し合いました。多様なバックグラウンドを持った参加者とのdiscussionは、研究に対する様々な視点から意見を頂けるだけでなく、互いを知り、認め合う為の大切な手段でもありました。他者に、これまで自分の研究内容や、研究に対する姿勢・考えを伝えることで、多くの人が私の研究を認めてくれましたし、講義でもProjectでも苦戦してばかりいるSynapse biology初心者の私でも、信頼を得ることができました。

休日の小旅行・ピラ砂丘

休日の小旅行・ピラ砂丘

 ボルドーでの3週間、決して堪能とは言えない私の英語力では上手くいかないことや失敗することばかりでした。しかし、参加者の殆どがnon-native English speakerであった今回のコースでは、言語の壁を気に留める人などほぼいませんでした。拙い英語でも、伝えよう、会話しようと常に働きかけることで周囲はいつも耳を傾けてくれましたし、世界中から多種多様な人が集まった今回のコースでは、話題が尽きることはありませんでした。ホテルから学校への道中、講義の合間のCoffee Break、食事、Project…時間さえあれば、互いの話、国や文化の話、研究の話、そして将来の話をしました。夜も、時間さえあれば皆で街の中心部へくりだし、昼とは違った夜の世界遺産都市ボルドーをワイン片手に楽しみました。3週間、このように参加者たちと過ごした日々は、私にとってこの上なく幸せで満たされた時間であり、間違いなく、これからの自分の生き方を考えていく上でかけがえのない経験となりました。帰国後も、グループチャットを通じて続く参加者たちとの繋がりは、今でも私の励みとなっています。

筆者は2列目の右から3人目

筆者は2列目の右から3人目

 最後になりましたが、YREPに応募するにあたってご指導頂きました服部光治教授はじめ多くの先生方と、ご支援頂きました日本神経科学学会・ヨーロッパ神経学会連合の関係者の皆々様に心より深く御礼申し上げます。