タンパク質を神経細胞の適切な場所に振り分ける仕組み

掲載日:2008/04/22
慶應義塾大学医学部生理学教室 松田信爾
 私たちの脳を作っている神経細胞は、「樹状突起」と「軸索」という2つの種類の突起を持っている。これらの突起の上で機能するタンパク質(膜タンパク質)は、細胞体で合成された後にそれぞれ正しい行き先(突起)に振り分けられて輸送される。例えば、他の細胞から信号を受け取る膜タンパク質であるAMPA受容体は主に樹状突起に存在している。近年の研究結果では樹状突起におけるAMPA受容体の数の変化が、記憶・学習の基礎過程であることが明らかになっている。しかしAMPA受容体がどのようにして樹状突起へ正しく輸送されるのかは全く謎であった。
 一般に、膜タンパク質には、その行き先を示す「荷札」に相当するアミノ酸配列があり、この「荷札」をアダプタータンパク質が認識してさまざまな場所に振り分け輸送される。我々は、神経細胞内においてこれまで働きがよく分かっていなかったAP-4アダプタータンパク質に着目し、その機能を調べるために神経細胞内にAP-4がないマウス(AP-4欠損マウス)を作成した。
 AP-4欠損マウスはうまく歩けず、ゆっくりと回転する棒の上にバランスをとって乗ることができなかった。その原因を調べたところ、AP-4欠損マウスの神経細胞では、本来樹状突起だけに送られるAMPA受容体が誤って軸索にも輸送されていることを発見した。
 これらの結果からAP-4はAMPA受容体の「荷札」を認識して樹状突起に輸送していることが明らかになった(図参照)。また我々は、AMPA受容体を樹状突起へと輸送する「荷札」に相当するアミノ酸配列はAMPA受容体になく、AMPA受容体に結合するTransmenbrane AMPA receptor Regulatory Protein (TARP)に取り付けられていることも明らかにした(Neuron 57: 730-745, 2008)。
研究者の声
 今回の研究テーマの最初のきっかけは、様々なグルタミン酸受容体の変異体を神経細胞に発現させていたとき、そのうちのひとつがたまたま樹状突起だけでなく軸索にも輸送されていることを発見したことでした。新しい研究テーマはどこに種が転がっているのか分からないということを実感しました。論文審査の段階で多くの追加実験を要求されましたが、あきらめずにやり遂げられてよかったと思います。
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