脊髄小脳変性症の遺伝子治療:モデルマウスの症状を大きく改善

掲載日:2008/05/30
群馬大学大学院医学系研究科神経生理学分野 寅嶋 崇
 我々は、ドラマ「1リットルの涙」でも紹介された小脳疾患、脊髄小脳変性症を治すための研究をしています。この病気の患者は全国に2万人いますが、この約3割は遺伝性です。遺伝性のうち、約6割は原因たんぱく質内のグルタミン(アミノ酸の一種)の繰り返しが異常伸長した結果、細胞内に塊をつくることによって引き起される、別名、ポリグルタミン病と言われる病気です。
 まず初めに、ポリグルタミン病の完治に向け、この病気のモデルマウスを作成しました。病気の原因であるポリグルタミンを小脳の重要な神経細胞であるプルキンエ細胞に発現させた訳です。このマウスはヒトと同様、震えや歩行失調などを示し、運動試験では良い成績をとることができませんでした。
 東京薬科大の柳先生のグループが発見したたんぱく質(CRAG)は培養細胞においてポリグルタミンの塊を分解することが知られていました。そこで、我々はこのCRAGというたんぱく質に着目し、遺伝子を運ぶプロであるウイルスの力を借りて、CRAGの遺伝子をモデルマウスの小脳に入れようと考えました。
 CRAGを組み込んだウイルスをモデルマウスの小脳に入れてから8週間後に運動試験を行なったところ、前よりずっと高成績を収めることができました。また、CRAGを入れたことにより小脳にあるポリグルタミンの塊の数も減っていることがわかりました。すなわちCRAGを小脳神経細胞に供給することによってポリグルタミン病モデルマウスの病状を改善させることに成功しました(EMBO reports 9(4) 393-9, 2008)。
研究者の声
 これからも治療に使えそうな他のたんぱく質をマウスで試し、治療法を確立していきたい。今現在、CRAGを即、臨床応用するのは無理ですが、ヒトに近い霊長類などを使って詳細なプロパティが得られれば、その後のヒトへの応用の加速につながると信じています。
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