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雄性性機能を制御する新たな脊髄内局所神経回路掲載日:2008/05/27
京都府立医科大学 解剖学教室 生体構造科学部門 坂本浩隆
雄の性行動をコントロールしている神経ネットワークは、脳と脊髄(せきずい)の多くの部位から構成される。ヒトにおける脊髄損傷(とくに腰仙髄)やラット腰髄を実験的に破壊すると反射性勃起が消失することから、腰髄には雄性性機能に深く関わる重要な領域が存在することが知られているが、その詳細についてはいまだ不明な点が多かった。
我々はラットを用いた実験で、自律神経と関わりの深い生理活性物質(ホルモン)の一つ、‘ガストリン放出ペプチド(GRP)’に着目して研究を進めた。GRPを産生する神経細胞は、腰髄のL3-4付近に多く存在し、その数は雌よりも雄に多く、腰髄のL5-6に位置する勃起や射精をつかさどる自律神経核にまで軸索を到達させていた。GRP産生細胞の軸索が自律神経核に到達し、終末部から放出されたGRPが勃起や射精などの自律神経のはたらきをコントロールしているものと考えられた。また、これらの自律神経核の神経細胞には、GRP受容体の存在が確認された。成熟雄を去勢して男性ホルモン(アンドロゲン)の血中濃度を減らしたラットでは、GRP発現が雌レベルまで低下し、さらに機能型アンドロゲン受容体を欠く突然変異体である精巣性女性化症モデル(tfm)の雄ラットでも同様にGRP発現が低下することから、腰髄におけるGRPの発現制御はアンドロゲン系依存的であると考えられた。この去勢ラットにGRPのアゴニスト(GRPと同様の作用をもつ薬)を投与すると、反射的な勃起と射精の回数が増加した。逆に、正常なラットにGRPのアンタゴニスト(GFPの機能を阻害する薬)を与えると、反射的な勃起と射精の回数が大幅に減少した。
以上の結果、腰髄に存在するGRP系は脊髄内に神経ネットワークを構築し、自律神経系をコントロールすることにより、勃起、射精などの雄性性機能を調節しているものと考えられた。この性機能を制御する新たな神経回路メカニズムの解明により、雄性性機能障害への治療法の開発が期待できる。
(Nature Neuroscience 11: 634-636, 2008) ![]() 研究者の声
この研究は形態科学的手法を中心に進めましたが、今回、多数の新聞紙とNHKニュースから報道されたことから、社会的インパクトが極めて大きかったことがわかります。動物の基本的生命現象は、わかっているようでまだまだ理解されていないことが多く存在します。研究は、場所と人を選ばず、どのような些細なことにでも興味と情熱を持って突き進めば世界トップレベルの研究として認められる可能性があるということを実感しました。
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