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乳幼児期における歯状回顆粒細胞の移動機構の解明
東京大学・大学院薬学系研究科・薬品作用学教室 小山隆太
私は、海馬における神経回路形成機構の解明を目的とした研究をおこなっております。特に、乳幼児期の海馬の発達異常と、てんかんや精神疾患等の将来における脳疾患の関連に強い興味を持っております。現在は、主に神経細胞の培養系を利用して、歯状回顆粒細胞の移動機構及びその軸索である苔状線維の軸索誘導機構の解明を目指しております。
このたび、顆粒細胞の移動機構に神経伝達物質であるGABAが関与することを発見し、この結果を、2007年度北米神経科学学会においてポスター発表して参りました。これに際し、日本神経科学学会及びSciTechEdit International社より「北米神経科学学会トラベルアワード」に選考して頂きました。関係各位の皆様にこの場をお借りして改めて御礼申し上げます。
北米神経科学学会は、世界各国より神経科学者が集まって最先端の研究結果を発表し、忌憚のない議論を繰り広げる学会です。私自身、これまでに同学会における活発な議論から多くの知見を獲得して参りました。2007年度の学会も3万人を超す参加者があり、ポスター発表の演題数も多く、同学会はポスター発表における議論が最も盛況な学会の一つであるとの印象を改めて持ちました。今回の私の参加目的は、顆粒細胞の移動機構の解明について現在までに得た結果を発表し、これに関して深い議論をおこなうことでした。以下に、研究結果の一部を簡単に紹介致します。
乳幼児期の海馬歯状回では、新生した顆粒細胞が歯状回門から顆粒細胞層へと、成体期と比較して長距離の移動をおこなうと推察されています(一方、成体期の海馬歯状回では、その移動は顆粒細胞下層から顆粒細胞層への限局した部位でおこります)。しかし、乳幼児期において顆粒細胞が移動する様子を明瞭に観察した報告は無く、その移動を制御するメカニズムに関する知見も乏しいものでした。私は、乳幼児期の緑色蛍光蛋白質(GFP)強制発現ラット由来の歯状回門微小切片と野生型ラット由来の海馬切片を共培養し、共焦点顕微鏡を用いて顆粒細胞移動のタイムラプス観察をすることに成功しました。その結果、幼若顆粒細胞が、歯状回門においては先導突起を顆粒細胞層に向けたradial migration様の移動をおこない、顆粒細胞下層から顆粒細胞層においてはsomal translocation様の移動をおこなうことが明らかになりました。また、これらの移動形式のうち、前者における移動速度及び移動方向がGABAA受容体の薬理学的な活性化によってそれぞれ、減速、反転するといった興味深い実験結果を得ました。今回の学会では、これらの結果を中心にポスター発表をおこなって参りました。
私のポスター発表(写真)は、Developmentセクションのうち、cell migrationの分野でおこなわれました。海馬の発達、細胞移動、GABA、そしててんかん等に興味を持つ数十人の研究者と実験方法から結果、そして本結果をもとに論文を作成する際の論旨展開に至るまで、一日中とぎれることなく深い議論を繰り広げることができました。自ら情報を発信して実験結果のアピールをできるだけではなく、様々な角度から、多くの重要なコメントを獲得できる北米神経科学学会は、研究をさらに磐石なものとするための絶好の場であると強く感じました。
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このたび、このような素晴らしい機会を与えて下さいました日本神経科学学会ならびにSciTechEdit International社の皆様に重ねて御礼申し上げ、2007年度北米神経科学学会参加記の結びとさせて頂きます。
【略歴】
2001年
東京大学薬学部卒業
2006年
東京大学大学院薬学系研究科 博士後期過程修了
2006年
東京大学大学院薬学系研究科 寄附講座教員
2007年
東京大学大学院薬学系研究科 助教
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