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演題詳細

Educational Lectures

基礎脳科学者のための精神疾患臨床ABC教育コース

開催日 2014/9/11
時間 9:00 - 11:00
会場 Room D(503)
Chairperson(s) 喜田 聡 / Satoshi Kida (東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科 / Department of Bioscience, Tokyo University of Agriculture, Japan)

病態に基づく精神医学診断体系

  • EL1-1
  • 尾崎 紀夫 / Norio Ozaki:1 
  • 1:名古屋大学大学院医学系研究科 / Nagoya Univ, Grad Sch of Med 

アメリカ精神医学会の診断体系、DSMは、従来、診断の信頼性を確保するために症候論的な視点を重視し、病因論的な観点を犠牲にしたため、診断の妥当性(特定の一群を抽出する)が損なわれているとの批判が強かった。精神症候学に基づいた診断分類であることは、例えば、「主たる症状が気分の問題である」という共通項があるという理由から、うつ病と双極性障害が同一の気分障害という枠内に入れられてきたことからも明らかである。しかし、2013年発表されたDSM-5では、双極性障害とうつ病が病因・病態研究の知見を元に、独立した章として扱われることとなった。
 DSMが1980年、その第三版DSM-3において、症候論的な視点を重視し、目指したことは、信頼性を有する診断基準による臨床研究と、関連の基礎研究を推進し、その結果に基づいて妥当性の高い診断基準を作成し、多くの一般身体疾患で採用されている、医学モデルに則った病因論的診断基準を作成することであった。しかし、この目標は遅々として進まず、診断の妥当性が損なわれているとの批判が高まる一方であった。
 今回の改訂は、双極性障害とうつ病が別立てになるなど、科学的知見による医学モデルに則った診断体系を追求するDSMの歴史を後に振り返えった際、エポック・メイキングとなり得よう。しかし、DSMが目指す医学モデルに則った診断体系には程遠く、DSM-5の発表に際しても、「精神障害が連続的なものであることが、病因・病態研究の結果などから示されているにもかかわらず、未だカテゴリカルな分類をとり続けている」、との批判がなされている。
 患者の個別性に即した治療を実践するためにも、各症状に対して連続的な重症度を用いた評価(ディメンジョナル評価)をすることが望ましいが、現在の病因・病態研究の成果では、ディメンジョナル評価を実施するに足る、特異性が高く、臨床的に有用なバイオマーカーは見出せていない。このような中、NIMHによってResearch Domain Criteria (RDoC) Projectが提唱され、症状をディメンジョナルに評価し、それを遺伝子、分子、細胞、神経回路などの階層と照合する作業が進められており、バイオマーカー開発とともに、病因・病態解明のためのアプローチとして期待される。
 定義によれば、疾病(disease)とは、特定の病因、病態生理、臨床症状、経過・予後、治療方法、病理組織所見が揃うものを指す。未だ、DSMにおいては障害(disorder)であり、今後、病因・病態に基づいた診断体系に再構築されなければならない。この再構築が達成されて初めて、病因・病態に基づいた診断・評価検査法、根本的治療法、予防法が開発され、「精神疾患の克服」に繋がるであろう。そのためには、精神医学臨床研究と、脳科学を主とする基礎科学研究の連携が必須である。                                                                                                                                                                                                                                                        

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