演題詳細
Educational Lectures
開催日 | 2014/9/12 |
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時間 | 18:10 - 19:10 |
会場 | Room D(503) |
Chairperson(s) | 柚崎 通介 / Michisuke Yuzaki (慶應義塾大学医学部生理学教室 / School of Medicine, Keio University) |
記憶と海馬
- EL7
- 池谷 裕二 / Yuji Ikegaya:1
- 1:東京大学大学院薬学系研究科 薬品作用学教室 / Lab.Chem.Pharmacol., Grad.Sch.Pharm.Univ.Tokyo
この教育講演では、エピソード記憶を司るといわれる「海馬」を中心として、記憶がどのように脳内で形成・保存されるのかを、歴史的な文献と最新の知見を交えながら、専門外向けに解説します。記憶は大雑把に陳述記憶と非陳述記憶に分けられます。海馬は主に前者、なかでも「エピソード記憶」と呼ばれる一群の記憶シリーズに関与します。海馬にまつわるこうした知見は主に、特定の脳部位に障害を持った患者の心理テストを通じて、明らかになったものです。動物の記憶を用いた海馬の研究には、この点において、別の困難があります。それは、ヒト以外の動物にそもそもエピソード記憶が存在するかという難問から逃れられないことです。しかし、動物を用いた研究には、操作性や再現性などのヒト研究にはない利点があり、海馬と記憶にまつわる詳細な現象が、動物および動物標本を用いた実験からわかってきています。なかでも海馬に顕著な「場所細胞」や「長期増強(LTP)」と呼ばれる神経現象をつぶさに観察することで、海馬の亜領域と記憶形成・記憶痕跡の関係、そのシナプス機構などが解明されつつあり、心理学や臨床医学的にも重要な示差を与えています。当日はこうした背景を時間の許す範囲で丁寧に解説したいと思います。