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2025年度 日本神経科学学会奨励賞受賞者 服部 祐季 先生

発達期脳におけるミクログリアの細胞動態と機能的意義

名古屋大学大学院医学系研究科
服部 祐季
このたびは、日本神経科学学会奨励賞という栄誉ある賞を賜り、大変光栄に存じます。日頃よりご指導くださる先生方、そして研究室の皆様に、心より御礼申し上げます。また、本賞の選考にご尽力くださった審査委員の先生方ならびに日本神経科学学会関係者の皆様に、厚く御礼申し上げます。
私は京都大学での学部時代に基礎研究に触れたことをきっかけに、基礎研究が未来の医学や治療に貢献し得る可能性に強く魅力を感じ、研究を通じて医学に寄与したいと思うようになりました。免疫学への興味から同大学大学院生命科学研究科に進学し、結核の病態解明に取り組みました。博士課程在学中に「脳の発生」に関心を持つようになり、脳という組織がゼロからつくり上げられる過程と、それを緻密に制御する仕組みに深い興味を抱きました。
その過程について、細胞の動きを丁寧に観察し、現象を実際に“目で見て捉える”ことを通じて理解を深めたいと考え、学位取得後に現在所属する名古屋大学大学院医学系研究科の宮田卓樹先生に師事し、新たな一歩を踏み出しました。これまでの免疫学での研究経験を活かし、脳内の免疫細胞である「ミクログリア」の研究を一から立ち上げたのが2015年のことです。それ以来、約10年にわたり、脳の発生過程におけるミクログリアと向き合ってまいりました。
ミクログリアの研究は、成体および生後脳における機能解析が先に進み、研究開始当時、胎生期における実態はほとんど明らかにされていませんでした。近年の一細胞レベルでの解析の進展により、ミクログリアの性質や多様性に関する知見は増えてきた一方で、「そうした状態がどのようなプロセスを経て確立されるのか」については未解明な点が多く残されています。
私はこれまで、スライス培養法を用いたマウス胎仔脳ライブ観察や、独自に開発した胎仔脳の生体イメージングによって、生体組織内でのミクログリアの細胞動態や、神経系細胞や血管との相互作用の把握を実現し、そのプロセスに迫る研究を展開してまいりました。この技術を利用し、ミクログリアの複数の脳定着経路や運命選択機構、周囲の環境による分布制御や性質決定の理解を深めてきました。胎仔脳生体イメージング技術の開発には、共同研究を支えてくださった先生方との試行錯誤の積み重ねに加え、父がマウス胎仔の保定器具の設計や製作に協力してくれたことも大きな助けとなりました。今も継続して、さまざまな胎齢への対応や長期間の観察が可能となるよう技術のさらなる改良を進めています。
現在は、ミクログリアの性質の多様性がいかに確立されるのか、そしてそれぞれの個性を持つミクログリアが脳機能にどのような貢献を果たすのかについて調べを進めています。また、生理的に確立されるミクログリアの特性が、病態下でどのように変化するのかという問いにも取り組み始めており、研究のベクトルは徐々に病態の理解へと広がりつつあります。現在は13名のチームメンバーとともに研究を進めており、今後さらに発展させ、脳発生メカニズムの理解に貢献したいと思っております。
今日まで多くの方々にご支援を頂きました。特に、宮田卓樹先生には私が研究を自由に進められるようご支援いただき、研究推進にあたっても常に的確なご指摘、丁寧なご指導を賜りました。研究チームのスタッフや学生の皆さんにも、良いチームワークを築いてもらったことで研究を円滑に進めることができました。学会等でお会いする先生方からのご助言や励ましも大きな力となりました。また、私は二人の子どもを育てながら研究を続けていますが、同じ境遇の方々から頂く仕事と育児の両立に関するご助言も支えとなりました。この場をお借りして、皆様に深く感謝申し上げます。
今後も自らの視野を広げ、未知の現象の理解と新しい概念を提唱できるような研究を目指し、挑戦を続けていきます。現在、恵まれた環境のもとで不自由なく研究を行うことができていることに感謝し、これからも研究活動に真摯に取り組んでいく所存です。そして、神経科学分野のさらなる発展と、次世代の研究者育成に貢献すべく尽力してまいります。今後とも、変わらぬご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
受賞研究内容に関する総説(Neuroscience Research掲載)
Hattori. Y., 2025. Microglial Colonization Routes and Their Impacts on Cellular Diversity. Neurosci. Res.216,104901
略歴
2010年3月 京都大学医学部保健学科検査技術科学専攻卒業
2012年3月 京都大学大学院生命科学研究科高次生命科学専攻 修士課程 修了
2012年4月 日本学術振興会特別研究員DC1 採用
2015年4月 名古屋大学大学院医学系研究科細胞生物学分野 特任助教
2016年4月 日本学術振興会特別研究員PD 採用
2019年8月 名古屋大学大学院医学系研究科細胞生物学分野 特任助教
2022年6月 名古屋大学大学院医学系研究科細胞生物学分野 講師
2023年7月-現在 名古屋大学大学院医学系研究科細胞生物学分野 准教授
服部 祐季(名古屋大学 大学院医学系研究科)
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