[学会について] 理事長からのメッセージ

日本神経科学学会創設50周年に際して

日本神経科学学会理事長
山中宏二
(名古屋大学環境医学研究所)
 
理事長を拝命してから約1年が経ちました。この間、学会の一般社団法人への移行に伴い、評議員制度の導入、社員総会の開催、会計年度の変更をはじめ、多くの変化がありました。会員の皆様のご支援とご理解に深く感謝申し上げます。
まず、一般社団法人への移行により、学会の重要事項(予算・決算等)は、評議員からなる社員総会で審議することになります。多様な意見を学会運営に反映するため、若手・中堅の世代からも評議員が選出されています。各種委員会委員にも若手・中堅の評議員・会員の登用がされつつあり、次世代の会員が学会運営に参加していただく流れができつつあります。次に、学会誌Neuroscience Research (NSR)の契約更新に向けて出版社と交渉をすすめており、現在最終段階であります。国際学術誌のオープンアクセス化は時代の趨勢であることから、NSRもオープンアクセス誌に移行する決断をしました。詳細について、近くアナウンスできるものと思います。さらに、国際連携においては、IBROのAsia-Pacific Regional committeeとSociety for Neuroscience (SfN) の理事に合田裕紀子先生、SfN プログラム委員長に尾藤晴彦先生が就任、活躍されており、本学会がこれらの学会のカウンターパートとして引き続き国際連携を深めていくことを期待しています。就任時に掲げた「私たちの神経科学学会」であるために、皆様の声を聞きながら、一人一人の会員にとって大切な、神経科学の発展に資するより良い学会にしてゆく所存です。引き続き、皆様のご支援をいただきますようよろしくお願いします。
昨年8月1日―4日に開催された第46回日本神経科学大会(仙台)に参加いただけたでしょうか。ポストコロナ時代の最初の年次大会となり、単独大会では過去最高レベルの参加者数を記録し、盛会のうちに終えることができました。COVID-19 pandemicはオンライン会議等による会議の効率化をもたらしましたが、年次大会が正常化した機会に、改めて対面での深い議論やコミュニケーション、相互交流の素晴らしさを実感できたと思います。2024年7月24日―27日には、第47回日本神経科学大会(Neuro2024, 福岡)が開催されます。日本神経化学会、日本生物学的精神医学会との3学会合同大会に加え、第8回FAONS(アジアオセアニア神経科学連合コングレス)を併催します。国内外から多くの神経科学者が参集します。ぜひ、多くの会員の皆様の参加により盛り上げていただきたいと思います。
さて、1974年に本会は「日本神経科学協会」として発足してから、本年は創立50周年にあたります(本会の沿革については、学会HP「日本神経科学学会とは」(https://www.jnss.org/about)をご覧ください。)。2024年から2025年にかけて、50周年記念行事を計画しており、その多くは、年次大会にあわせて企画する予定です。会員の皆様も、本会と神経科学のこれまでとこれからを考える機会にしていただければ幸いです。私自身は、これまでの学会の歩みを語るよりも、この機会にこれからの神経科学について少し考察したいと思います。2050年の日本社会について多くの予測がなされています。人口は約30%減、現役世代・若年人口の大幅減少が想定されており、人手不足への対応も含めて社会のシステムを大幅に変革する必要があるだろうと思います。人工知能(AI)、デジタル技術などによる無人化や自動化もその対策の一つと予想しますし、教育や研究の現場も大きく変化すると思います。様々な技術革新を通じて神経科学が発展することにより、脳の構造や動作の原理の解明や、脳疾患の克服が進むことが期待されますが、AIの能力が人間を凌駕すると言われる2050年(頃)には、人間としてのアイデンティティを規定する脳の本質的理解の重要性はより高まるものと思っています。日本神経科学学会が今後も持続的に発展し、将来も、これらの課題に取り組む神経科学者のコミュニティーの中心的存在であることを願っています。
2024年4月

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